
足立区で柔道整復師の求人を探すと、まず驚くのは件数の多さでしょう。大手求人媒体では100件を超える掲載が並び、北千住、竹ノ塚、綾瀬、西新井、五反野と、主要駅のほぼすべてに募集が存在します。
ところが、実際に転職した人の声を聞くと「入ってみたら聞いていた話と違った」「3年経っても手技が身についていない」という後悔が驚くほど多い。求人が多いことと、良い求人が多いことは、まったく別の話です。
この記事では、厚生労働省の一次データを起点に、足立区という地域で柔道整復師が働くとはどういうことなのかを構造から解きほぐします。求人票のどこを見れば将来の年収とキャリアが読めるのか、そして2024年4月に変わった制度が、あなたの3年後をどう左右するのか。求人サイトの一覧ページには載っていない話を書きます。

足立区は東京23区のなかでも整骨院・接骨院の密度が高いエリアです。区内には保険診療を扱う施術所、自費に振り切った整体院、デイサービスの機能訓練指導員枠、整形外科のリハビリ助手枠までが混在し、それぞれがまったく異なる仕事内容でありながら、求人媒体上ではすべて「柔道整復師求人」という同じ棚に並びます。
ここに、求職者が最初につまずく落とし穴があります。
たとえば「機能訓練指導員」として介護施設に勤める場合、施術という行為はほぼ行いません。高齢者の歩行訓練や運動指導が主業務であり、手技を磨きたい人にとっては目的とずれる可能性が高いでしょう。一方で日勤のみ、土日休み、残業ほぼなしという条件は魅力的に映る。どちらが正しいという話ではなく、求人票の職種名だけでは「自分が3年後に何ができる人間になっているか」がまるで見えない、という点が問題なのです。
では、なぜこれほど求人が滞留するのか。採用側の視点で言えば、答えははっきりしています。応募は来るが、定着しない。定着しないから、また募集を出す。同じ院が年に何度も掲載を繰り返す構造ができあがっているのです。求人件数の多さは、地域の求人需要の強さであると同時に、離職率の高さを映す鏡でもあります。

感覚論ではなく、公的統計から現在地を確認しましょう。
厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」によれば、令和6年末時点の就業柔道整復師は78,666人で、前回調査(令和4年)から1,034人、率にして1.3パーセントの増加にとどまりました。同時に、柔道整復の施術所は50,924か所で、前回比8か所の増加という、ほぼ横ばいの結果でした。
出典:令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
この2つの数字を並べると、業界の姿がくっきりと浮かび上がります。施術所の数は増えていない。にもかかわらず、有資格者は増え続けている。単純に割れば1施術所あたり1.5人前後という計算になり、10年前と比べて明らかに「1院に複数の柔整師が勤める」構造へと移行しました。
厚生労働省の社会保障審議会に提出された資料でも、施術所数の増加傾向そのものは続いているものの、その伸び率は鈍化していると明記されています。令和6年の登録施術所数は50,924か所、そのうち受領委任を取り扱う施術所は46,551か所でした。
出典:柔道整復療養費の令和8年度改定の基本的な考え方(案)について|厚生労働省
かつて柔道整復師の王道は「数年勤めて独立開業」でした。その前提が、統計上すでに崩れている。開業して成立する市場が飽和に近づいているからこそ、勤務柔整師として長く働く選択肢が現実味を帯びてきたのです。そして長く勤めるつもりなら、最初の職場選びの重みは、独立前提の時代とは比較にならないほど大きくなります。
収入面はどうでしょうか。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に掲載された令和6年賃金構造基本統計調査ベースの数値では、柔道整復師の全国平均年収は430.2万円、ハローワーク求人統計データ上の月額賃金は27.2万円と示されています。
出典:柔道整復師|職業情報提供サイト job tag(厚生労働省)
月額27万円前後、年収430万円前後。これが、あなたが求人票を見るときの基準線になります。
足立区の求人を眺めると、月給26万円スタートという表示が非常に多い。これは全国平均をやや下回る水準からのスタートを意味します。もちろん賞与や手当で最終的な年収は変わりますが、「月給26万円」という数字が業界の標準的な入口であることは知っておくべきでしょう。逆に言えば、そこから明確に上振れた提示をしている求人には、必ず理由があります。その理由が構造的なものか、それとも歩合や長時間労働によるものかを見抜くことが、求人票を読むという行為の本質です。

同じ足立区、同じ柔道整復師の求人で、なぜ月給26万円と月給40万円台が並存するのか。技術力の差でしょうか。人柄でしょうか。違います。売上の作り方の差です。
保険(療養費)を扱う院の収益は、療養費の単価に直接縛られます。参考までに、令和8年7月1日施行の料金改定では改定率はプラス0.60パーセント、初検料は1,550円から1,560円へ、再検料は410円から420円へ引き上げとなりました。
出典:令和8年度 柔道整復師の施術に係る療養費について|全国柔整鍼灸協同組合
初検料が10円上がる。その改定に、業界全体が注目する。この事実そのものが、保険診療の単価構造を雄弁に物語っています。1人あたりの単価が数百円から千数百円の世界では、売上を伸ばす手段は「人数を増やす」ことに限定されがちです。1日40人、50人と回転させる院が生まれるのは、悪意ではなく算数の帰結なのです。
そして人数を回す施術現場では、1人の患者に向き合える時間はどうしても短くなる。若手が学べるのは効率的な流し方であって、慢性症状を構造から読み解く思考ではありません。「3年いたのに技術が身についていない」という後悔の正体は、多くの場合ここにあります。
自費中心の院は、単価を自ら設定します。単価が数倍になれば、同じ売上を少ない人数で作れる。1人あたりの施術時間を長く取れるため、検査・仮説・検証というプロセスを踏む余地が生まれます。給与原資が厚くなるのは、その結果にすぎません。
参考までに、CUREPROは完全自費で保険請求を行わない運営を選択しており、在籍スタッフの平均給与は月額42.7万円です。この数字は特別な才能によって達成されているのではなく、単価設計と教育投資の順番を間違えていないというだけの話だと考えています。
「完全歩合制55〜65パーセント」「インセンティブあり」といった表記を見たら、確認すべきは還元率ではありません。分母です。何に対する何パーセントなのか。指名売上のみか、担当売上全体か、物販を含むのか。そして、その分母を作るための集患は誰が担うのか。
還元率が高い求人ほど、集患責任が個人に転嫁されている場合があります。腕を磨きたくて入ったのに、実態は営業職だったという食い違いは、面接前の1問で防げます。「先月、このポジションの方の実支給額はいくらでしたか」と聞けばいい。答えられない、あるいは幅で濁される場合、その歩合は設計されていない可能性が高いでしょう。

ここからが、この記事でもっとも伝えたい部分です。足立区に限らず、求人サイトのどのページにもほとんど書かれていない、けれど20代の柔道整復師にとって決定的に重要な制度の話をします。
保険を扱う整骨院を開業する、あるいは分院長として受領委任の届出を行うには、「施術管理者」になる必要があります。かつては資格さえあれば即開業が可能でしたが、2018年の制度改正で実務経験と研修受講が要件に加わり、段階的に引き上げられてきました。
令和6年(2024年)4月1日以降に施術管理者になる場合、3年間の実務経験が必要です。実務経験として認められるのは、地方厚生局において受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所(登録施術所)における従事期間であり、病院・診療所での従事期間は最長2年まで、残り1年は登録施術所で従事する必要があります。介護施設やデイサービス、未登録施術所での勤務期間は認められません。
出典:柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について|厚生労働省(近畿厚生局)
あわせて、2日間・計16時間の施術管理者研修の修了も必須となります。研修修了証には有効期限があるため、取得のタイミングも計算に入れる必要があるでしょう。
ここで、多くの求人サイトが触れない事実に踏み込みます。
実務経験としてカウントされるのは、あくまで「受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所」での勤務です。つまり、保険請求を一切行わない完全自費の院で働いた期間は、施術管理者の実務経験に算入されない可能性が高い。これはCUREPROのような完全自費モデルの院にとって、採用上は明らかに不利な情報です。それでも、入職してから知る種類の情報ではないと考えるため、私たちは面接の場でこれを先に伝えています。
では、自費の院で働くと将来が閉ざされるのか。そうではありません。分岐は「保険を扱う整骨院を開業したいのか」という一点にあるからです。
保険診療を軸にした整骨院の開業を人生の目標に据えているなら、登録施術所での3年間を最短で積むキャリア設計が合理的です。逆に、自費の整体院として独立する、あるいは組織のなかで技術と役職を積み上げるつもりなら、受領委任の要件はあなたの人生に一度も登場しません。
問題は、この分岐を「知らないまま」20代を過ごしてしまうことです。3年目に開業を意識し始めて初めて要件を知り、そこから3年を積み直す。この遠回りが業界のあちこちで起きています。
制度は、目的が決まっていない人にとってだけ罠になります。だからこそ、求人を探す前に決めるべきは「どの院に入るか」ではなく「何のために資格を使うのか」なのです。
保険整骨院での開業を目指すなら、受領委任の登録施術所であるかを面接で確認し、実務経験期間証明書を発行してもらえる関係を最初に築いておく。慢性症状の改善技術を極めたいなら、1人あたりの施術時間と教育投資額を確認する。介護分野で安定して働きたいなら、機能訓練指導員枠を積極的に選ぶ。どれも正解であり、正解が違うだけです。

ここまでの内容を、実際の求人票を前にしたときの確認手順として整理します。
※「研修充実」「頑張りを評価」といった抽象表現ではなく、時間・金額・基準など具体的な数字で確認しましょう。

求人票は院の建前です。実態は、質問への反応速度に現れます。
離職ゼロを誇る院より、離職の理由を構造として語れる院のほうが、組織として信頼できます。完璧な職場は存在しませんが、課題を認識し、言語化している組織は改善します。
そして、面接に誰が出てくるか。一次面接から代表や経営層が出てくるかどうかは、その組織が採用をコストと見ているか、投資と見ているかの分かれ目です。CUREPROでは一次面接から代表が同席しています。理由は単純で、人生の時間を預けてもらう相手に、最初から本音で話したいからです。

最後に、足立区という地域で柔道整復師が取りうる進路を、実際の求人分布から3つに整理します。
| キャリアの型 | 主な特徴 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 保険整骨院で管理者を目指す | 登録施術所で実務経験を積み、分院長や開業を目指す | 受領委任の登録状況と実務経験期間証明書の発行 |
| 介護・機能訓練分野で働く | 日勤中心で生活リズムを整えやすい | 施術管理者の実務経験には算入されない点 |
| 自費で技術を積み上げる | 慢性症状へ時間をかけ、技術を収入につなげやすい | 保険施術の管理者要件とは異なるキャリアになる点 |
保険整骨院で管理者を目指す型。登録施術所で3年の実務経験を積み、施術管理者研修を修了し、分院長または開業へ進みます。制度上の道筋が明確である反面、療養費の単価は制度に依存し、患者数の確保が経営の主要課題となる点は理解しておくべきでしょう。
介護・機能訓練の型。デイサービスや有料老人ホームで機能訓練指導員として働く道です。日勤中心で生活リズムは安定しますが、前述のとおりこの期間は施術管理者の実務経験に算入されません。手技を主軸に据えないキャリアとして選ぶなら、合理的な選択肢だと言えます。
自費で技術を積み上げる型。慢性症状や難治性の症状に、時間をかけて向き合う道です。保険の枠組みを離れるため、施術管理者要件のカウントからは外れます。その代わり、単価と施術時間の自由度が高く、技術の深さがそのまま収入に接続しやすい構造を持ちます。
3つのうち、どれが優れているという話ではありません。ただし、目的に合わない3年間を過ごさないことが重要です。20代前半で選ぶ道と、30代で気づいて修正する道では、必要なコストがまるで違う。だからこそ、いま知っておいてほしかったのです。

ここまで読んで、「自分がどの型に進みたいのか、まだ言語化できていない」と感じたなら、それは遅れではなく、むしろ健全な出発点です。多くの人は、言語化しないまま入職し、3年後に違和感の正体を探し始めます。
CUREPROは東京・埼玉・千葉で10院を展開し、足立区内では六町店と五反野店が稼働しています。完全自費で保険請求を行わず、外傷性のものは扱いません。平均給与は月額42.7万円、年間休日は選択制、評価基準は書面で公開しています。そして先述のとおり、当院での勤務期間は保険整骨院の施術管理者要件にはおそらく算入されません。
この条件が、すべての人に合うとは考えていません。保険整骨院を開業したい人には、私たちは最適な職場ではないでしょう。しかし、薬に頼らず本来の力を引き出す施術を突き詰めたい人、患者さんの人生のパフォーマンスを上げる仕事に時間を使いたい人にとっては、選ぶ価値のある環境だと自負しています。
採用サイトでは、実際の評価基準、給与テーブル、在籍スタッフのキャリアの歩みを公開しています。応募でなくてかまいません。まずは院の見学でも、進路の相談でも構いませんので、CUREPRO採用サイトからお声がけください。一次面接には、代表の私が出ます。
あなたが3年後にどんな柔道整復師になっていたいのか。その問いから逆算した話を、一緒にしましょう。
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監修 阿部純治(柔道整復師/株式会社May-Plus 代表取締役) 日本大学法学部卒業後、中央医療学園にて柔道整復師免許を取得。完全自費の構造改善整体「CUREPRO」を東京・埼玉・千葉で10院展開。
参考資料