
院長になる方法を調べると、出てくるのは医師の話ばかりです。クリニックの開業、雇われ院長の年収、医療法人の設立。施術者として院長を目指す方にとって、答えの載っていないページが並びます。
理由は単純で、院長という言葉が指すものが、業種によってまるで違うからです。まずそこを分けなければ、何を準備すればよいのかも見えてきません。
柔道整復師として現場に立ち、いまは複数の院を運営する立場から、順を追って整理します。

意外に思われるかもしれませんが、院長という肩書きを直接定めた法律の条文は存在しません。誰を院長と呼ぶかは、法律で決まっていないのです。
ただ、社会通念上は、医療法が定める管理者を指すと理解されています。そして管理者には、法律が厳格な条件を置いています。話がややこしくなるのは、この重なり方が業種によって変わるからです。
整理します。院長になる方法を考えるときに最初に問うべきは、資格でも年数でもありません。自分が目指している場所が、法律が管理者を定めている領域なのか、会社が役職を定めている領域なのか。その一点です。
| 目指す場所 | 院長・管理者の位置づけ | 主な要件・確認事項 |
|---|---|---|
| 病院・診療所 | 医療法上の管理者 | 原則として臨床研修等を修了した医師 |
| 健康保険を扱う整骨院 | 療養費の受領委任を管理する施術管理者 | 柔道整復師資格、通算3年の実務経験、施術管理者研修 |
| 自費の整体院 | 会社が定める社内の役職 | 昇進基準、役割、権限、評価方法が明文化されているか |
※「院長」という呼称が同じでも、法律上の責任と必要な準備は業種によって異なります。

医療法は、病院や診療所を臨床研修等を修了した医師に管理させなければならないと定めています。一般に管理医師と呼ばれる立場であり、通常はその人が院長に就任する。条文は医療法の第10条にあります。
加えて第12条第1項は、開設者が管理者となりうる者である場合、自らその医療機関を管理しなければならないと定めます。医師個人が開業したなら、開設者と管理者と院長が同一人物になるのが原則です。
実効性を担保するため、罰則も置かれています。第10条の管理義務に違反した場合、20万円以下の罰金が定められています。
ここが見落とされがちな点です。医師でない者が医師と紛らわしい名称を用いることは、医師法によって禁じられています。したがって、医師でない方が医療機関において院長を名乗ることには、法的な問題が生じるおそれがあります。
では、勤務実態のないまま名前だけを貸す、いわゆる名義貸しはどうでしょうか。管理者は法律上の責任者であり、責務を果たすために原則として勤務している必要があります。書類の上で就いているだけという状態は、想定されていません。医療機関の開設者となれば、賃貸借契約や雇用契約の名義人にもなります。経営に関与していないつもりでも、契約上の義務は名義人に及びます。

ここから、施術者にとって現実的な話に移ります。
柔道整復の施術所は、柔道整復師法に基づき、開設後10日以内に管轄の保健所へ開設届を提出する必要があります。開設そのものに、医療機関のような資格要件はありません。
ただし、健康保険を扱うとなると条件が変わります。療養費の受領委任を管理する立場を施術管理者と呼び、2024年4月以降に届出を行う場合、資格取得後に通算3年の実務経験が求められます。あわせて、2日間で計16時間の施術管理者研修を修了しなければなりません。詳細は地方厚生局の施術管理者の要件についてで確認できます。
実務経験として認められるのは、受領委任の取扱いを行うものとして登録された施術所での勤務です。保険医療機関での勤務は最長2年まで算入され、残る1年以上は登録施術所である必要があります。介護施設やデイサービスでの機能訓練指導員としての期間は算入されません。
もうひとつ、実務家ほど痛感する落とし穴があります。実務経験が認められるのは、勤務先が保健所と地方厚生局に勤務する柔道整復師として届出を行っている場合に限られます。届出が漏れていれば、実際に働いていた期間であっても証明ができません。院長を目指すなら、入職時にその手続きを確認してください。

いわゆる整体には、法的な資格制度がありません。したがって、行政が定める管理者の要件も存在しません。
つまり、自費の整体院における院長とは、法律の産物ではなく、その会社が設計した社内の役職です。何年働けば就けるのか、何を達成すれば任されるのか。すべて会社の裁量に委ねられています。
自由である一方、危うさもある。基準が明文化されていない組織では、院長になれるかどうかが院長の主観に左右されます。だからこそ、昇進の基準が全員に公開されているかどうかは、就職や転職の判断材料として決定的な意味を持ちます。

制度の話はここまでです。ここからは、実際に人を任せてきた立場からお伝えします。
施術が最もうまい人が院長になると、たいてい院は伸び悩みます。理由は明快で、院長の仕事は自分が施術することではないからです。
ひとりの施術者が動かせる売上には、時間という上限があります。院の売上は、そこに所属する全員の合計です。だとすれば、任せるべきは、後輩の技術を引き上げた人、予約が埋まらないスタッフの原因を見抜いて手を打った人でしょう。自分の指名数を誇る人ではありません。
院長候補を探すとき、私が見るのはそこです。実績は、自分の数字ではなく、他人の数字の変化に表れます。
難しい会計知識は要りません。新規の来院数、再来の割合、一人あたりの単価、キャンセルの発生率。四つの数字を追い、先月と比べて何が動いたかを説明できれば十分です。
感覚で語る人は、うまくいかなくなったときに打ち手が出ません。数字で語れる人は、仮説を立て直せます。
最後に、最も重い条件を挙げます。施術を中止し、医療機関へつなぐ判断ができるかどうか。
売上を考えれば、来られた方をお断りするのは苦しい決断です。それでも、危険を察知して手を止められる人でなければ、院を預けることはできません。院長とは、その院で起きるすべての結果に責任を負う立場だからです。
院長という椅子は、技術に対するご褒美ではありません。責任の所在を明示するための仕組みです。

CUREPRO(株式会社May-Plus)は、東京、埼玉、千葉で10院を展開する整体院です。完全自費で運営しており、保険請求は行っていません。スタッフの平均給与は42.7万円で、年間休日は選択制です。慢性的な痛みから難治性の症状、スポーツ障害まで、力に頼らない施術技術を学べる環境を整えてきました。外傷への対応は有資格者による判断が前提となるため、当院では扱っていません。
先ほど、基準が公開されているかを見てくださいとお伝えしました。私たちは評価の基準をスタッフ全員に公開しています。何を満たせば次の役割を任されるのかが見えていなければ、努力の方向が定まらないからです。研修の中身は教育研修制度に、働き方は募集要項と福利厚生のページで開示しています。
正直に申し添えると、保険請求を行っていない当院での勤務期間は、将来的に受領委任を扱う開業を目指す方にとって、施術管理者の実務経験として算入されない可能性が高い。都合の悪い事実ですが、入職後に知るほうが困るはずです。保険を扱う院を持ちたいのか、自費で組織を率いたいのか。方向が決まれば、進む道も定まります。

院長になる方法という問いは、法律の話と、会社の話と、人としての条件が混ざり合っています。順番に分ければ、やるべきことは意外なほど具体的に見えてくるはずです。
いまの職場で昇進の基準が見えない。自分が院長に向いているのか分からない。どの段階でも構いません。柔道整復師として現場に立ち、院長を任せる側にも立ってきた立場から、一緒に整理させていただきます。面接の一次には、代表の阿部が同席します。
私たちが何を大切にしているかは、選ばれる理由のページにまとめました。話を聞いてみたいと思われたら、エントリーフォームからご連絡ください。

医療機関の管理者は医師でなければならないと医療法が定めています。医師でない者が医師と紛らわしい名称を用いることも医師法で禁じられているため、医療機関で院長を名乗ることには法的な問題が生じるおそれがあります。整骨院や整体院は別の枠組みです。
施術所の開設自体は保健所への届出で行えます。ただし健康保険の受領委任を扱う施術管理者となるには、2024年4月以降、通算3年の実務経験と、2日間16時間の施術管理者研修の修了が求められます。
法定の管理者要件はなく、会社が定めた社内の役職として運用されます。だからこそ、昇進の基準が明文化され、全員に公開されているかどうかを確認することをおすすめします。
施術の腕と、院を任される適性は別の能力です。自分の売上ではなく他人の売上を上げた実績、数字から原因を読み解く力、安全のために施術を止められる判断。院長に問われるのはそちらです。
管理者は法律上の責任者であり、勤務実態のない就任は想定されていません。開設者となれば各種契約の名義人にもなり、経営に関与していなくても契約上の義務を負うおそれがあります。判断に迷う場合は弁護士など専門家にご相談ください。
e-Gov 法令検索「医療法」(第10条、第12条、第89条)
厚生労働省 近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」
制度の内容は公表時点のものです。法令は改正されることがあるため、最新の情報は各出典や管轄の行政機関でご確認ください。個別の法的判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
キャリアの道筋をさらに具体的に知りたい方は、自費整体という働き方や柔道整復師の給料の考え方もあわせてご覧ください。求人の探し方については、柔道整復師の求人で整理しています。