
柔道整復師の新卒求人を検索すると、整骨院、整形外科、デイサービス、整体院と、さまざまな募集が並びます。初任給、年間休日、研修制度。どれも大切な条件ですが、条件を横に並べただけでは、どこを選ぶべきかは見えてきません。
順番が違うのです。新卒の就職で先に確かめておきたいのは、給与でも休日でもありません。その職場で過ごす3年間が、3年後の自分に何を残すのかという一点です。
柔道整復師として現場に立ち、いまは院を運営している立場から、制度と数字をもとに整理します。学生の方にも、すでに内定を持っている方にも、判断の材料として使っていただければと思います。

就職活動と国家試験の準備は同時に進みます。両立に悩む方は多いでしょう。優先順位を考えるうえで、知っておくべき数字があります。
令和8年3月1日に実施された第34回柔道整復師国家試験の結果は、受験者4,434名に対して合格者3,170名、合格率は71.5%でした。ただ、この数字を新卒と既卒で分けると景色が変わります。新卒受験者は2,982名中2,692名が合格し、合格率は90.3%。一方、既卒受験者は1,452名中478名の合格で、32.9%にとどまりました。出典は厚生労働省の第34回柔道整復師国家試験の合格発表についてです。
新卒として受験できるのは、一度きりです。そして落ちた翌年、合格率はおよそ3分の1の水準へ落ちます。学校の授業と国試対策のリズムから離れることの重さが、数字にそのまま出ています。
内定を得ることは大切です。ただ、内定は資格があってはじめて意味を持ちます。就職活動に神経をすり減らして国試の準備が薄くなるなら、順番を間違えているかもしれません。

ここからが、この記事で最もお伝えしたい内容です。求人票にも、学校の就職説明にも、あまり書かれていません。
整骨院や接骨院を開き、健康保険を扱う。業界で保険を取り扱うと呼ばれる状態は、正確には療養費の受領委任という制度に基づきます。その取扱いを管理する立場が施術管理者です。
2024年4月以降に施術管理者の届出を行う場合、資格取得後に通算3年の実務経験が求められます。加えて、2日間で計16時間の施術管理者研修の受講も必要です。制度の内容は、地方厚生局が公開している施術管理者の要件についてで確認できます。
実務経験として認められるのは、地方厚生局に受領委任の取扱いを行うものとして登録された施術所での勤務です。病院や整形外科クリニックなどの保険医療機関での勤務も認められますが、最長2年まで。残る1年以上は、登録施術所で働く必要があります。
そして、介護施設やデイサービスにおける機能訓練指導員としての勤務期間は、実務経験に算入されません。養成施設の教員としての期間も同様です。
新卒向けの求人一覧を眺めていると、デイサービスや機能訓練指導員の募集が目に入るはずです。日勤のみ、残業ほぼなし、年間休日120日前後。働きやすさという点では、確かに魅力があります。高齢の方の生活を支える仕事に、大きな意義があることも間違いありません。
ただ、想像してみてください。新卒で入職し、誠実に3年間を過ごしたとします。技術も経験も積んだ。それでも、いざ保険を扱う整骨院を開こうとしたとき、実務経験はゼロから数え直しになります。
整理します。将来、保険を扱う開業を考えているなら、最初の3年は登録施術所での勤務を軸に組み立てる必要がある。保険を扱わない自費の独立を考えているなら、この制約はそもそも関係ない。どちらを目指すかを先に決めなければ、就職先の良し悪しは判断できません。
もうひとつ、現役の施術者でも見落としがちな点があります。実務経験として認められるためには、勤務先が保健所へ勤務者の届出を行い、地方厚生局にも勤務柔道整復師として申出を行っている必要があります。
届出が漏れていると、実際に働いていた期間であっても、実務経験の証明ができません。数年後、開業しようとした段階でその事実に気づく。取り返しのつかない事態です。
入職して落ち着いたら、勤務柔道整復師としての届出が済んでいるかを確認してください。事務手続きの話に聞こえるかもしれませんが、あなたの3年間を守るのは、その一手間です。

制度の話を踏まえたうえで、それぞれの職場を見ていきます。
整骨院や接骨院は、新卒の求人が最も多く、外傷への施術という国家資格の本領を発揮できる場です。受領委任の登録施術所であれば、実務経験も積み上がります。ただし、保険診療を柱にする院では、単価が制度で定められているため、売上を伸ばそうとすれば来院数を増やすほかありません。一人にかけられる時間は短くなりがちです。
整形外科やクリニックでは、医師の指示のもとでリハビリ補助を担います。医学的な知識が深まり、労働時間も安定しやすい環境です。実務経験としては最長2年までしか算入されないため、開業を見据えるなら滞在期間の設計が必要になります。
介護施設の機能訓練指導員は、働きやすさと社会的意義の両方があります。実務経験に算入されない点だけは、繰り返しになりますが押さえてください。
自費の整体院は、保険点数のルールから外れて運営されます。単価を自分たちで設計できるため、一人ひとりに時間をかけながら事業が成り立つ構造です。学べる技術は、外傷対応よりも慢性的な不調やスポーツ障害への対応が中心になります。
| 主な就職先 | 積み上がる経験 | 施術管理者の実務経験 |
|---|---|---|
| 受領委任の登録整骨院・接骨院 | 外傷対応、保険制度、施術所業務 | 算入対象 |
| 病院・整形外科クリニック | 医師の指示下でのリハビリ補助、医学的知識 | 最長2年まで算入 |
| 介護施設・デイサービス | 高齢者の生活機能を支える機能訓練 | 算入対象外 |
| 自費の整体院 | 慢性的な不調への対応、説明、サービス設計 | 算入対象外となる可能性が高い |
※将来、保険を扱う開業を考える場合は、勤務先が受領委任の登録施術所か、勤務者の届出が行われるかを確認してください。

新卒向けの求人には、ほぼ例外なく研修充実と書かれています。書かれていない求人のほうが珍しいくらいです。だからこそ、言葉の中身を尋ねる価値があります。
研修は業務時間内に行われるのか、それとも閉院後の無給の練習を指しているのか。費用は誰が負担するのか。独り立ちまでの期間はどれくらいで、そこまでに何を習得するのか。カリキュラムとして明文化されているのか、先輩の背中を見て覚えるという意味なのか。
質問に具体的な数字と手順で答えられる職場は、教育を仕組みとして持っています。言葉を濁す職場は、そうではないというだけの話です。答えを聞き出せなかったこと自体が、ひとつの情報になります。

新卒のうちは、給与の額そのものより、給与が上がる条件のほうが重要かもしれません。何を達成すれば評価されるのか。基準が全員に公開されているのか。それとも院長の胸の内にあるのか。
基準が見えない環境では、努力の方向が定まりません。3年後、同期と比べて自分が何を得たのか説明できない。そんな事態を避けるために、面接では評価制度の中身まで踏み込んで聞いてみてください。

CUREPRO(株式会社May-Plus)は、東京、埼玉、千葉で10院を展開する整体院です。完全自費で運営しており、保険請求は行っていません。スタッフの平均給与は42.7万円で、年間休日は選択制です。慢性的な痛みから難治性の症状、スポーツ障害まで、力に頼らない施術技術を学べる環境を整えてきました。外傷への対応は有資格者による判断が前提となるため、当院では扱っていません。
ここで、隠さずにお伝えしておきます。私たちは保険請求を行っていないため、将来、保険を扱う整骨院の開業を目指す方にとって、当院での勤務期間が受領委任の実務経験として算入されない可能性が高い。都合の悪い事実ですが、入職してから知るほうが、はるかに困るはずです。
裏を返せば、自費で独立する道を選ぶなら、この制約は関係ありません。価格を設計し、身体の状態を言葉にして伝え、技術で選ばれる。その一連の経験こそが資産になります。研修の中身は教育研修制度に、働き方は募集要項と福利厚生のページで公開しています。

3年後の自分を正確に見通せる学生など、ほとんどいません。それで構わないと思います。ただ、決めるための材料は、できるかぎり集めてください。
保険を扱う開業を目指すのか、自費で独立したいのか、組織のなかで技術を極めたいのか。方向が定まれば、最初の3年をどこで過ごすべきかは、おのずと絞られてきます。まだ答えが出ていない段階でも、話を聞かせてください。柔道整復師として現場に立ってきた立場から、一緒に整理させていただきます。面接の一次には、代表の阿部が同席します。
私たちが何を大切にしているかは、選ばれる理由のページにまとめました。気になることがあれば、エントリーフォームからご連絡ください。国家試験の勉強を優先しながらでも、無理のない形でお話しできればと思います。

第34回国家試験では、新卒の合格率が90.3%だったのに対し、既卒は32.9%でした。新卒として受験できるのは一度きりです。就職活動で消耗して準備が薄くなるくらいなら、国家試験を優先する判断も合理的だといえます。
保険を扱う開業を目指す場合は影響します。介護施設やデイサービスでの機能訓練指導員としての勤務期間は、受領委任の施術管理者に必要な実務経験に算入されません。保険を扱わない自費の独立を目指すなら、制度上の制約はありません。
保険医療機関での勤務は最長2年まで実務経験として認められます。通算3年を満たすには、最低1年以上を受領委任の登録施術所で勤務する必要があります。
勤務先が保健所へ勤務者の届出を行い、地方厚生局に勤務柔道整復師として申出をしているかを確認してください。届出が漏れていると、実際に働いていた期間でも実務経験を証明できない場合があります。
地域や職場、雇用形態によって幅があるため、一律の目安を示すことは適切ではありません。求人票では基本給と歩合の内訳、固定残業代が含まれるかどうか、賞与の支給実績まで確認しましょう。額面よりも、内訳のほうに情報があります。
厚生労働省「第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」
厚生労働省 近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」
数値および制度の内容は公表時点のものです。制度は改正されることがあるため、最新の情報は各出典や管轄の地方厚生局でご確認ください。
働き方の選択肢を具体的に知りたい方は、自費整体という働き方や柔道整復師の給料の考え方もあわせてご覧ください。求人の探し方については、柔道整復師の求人で整理しています。