
整骨院の人間関係について検索すると、体験談が並びます。院長が高圧的だった。先輩が無視してくる。患者さんとの距離感がつかめない。どれも現実に起きていることでしょう。
ただ、エピソードをいくら読んでも、自分の職場をどう判断すればよいのかは見えてきません。人が悪いのか、環境が悪いのか。その切り分けができないまま、我慢を続けてしまう方が少なくないように思います。
柔道整復師として現場に立ち、いまは院を運営する立場から、少し違う角度でお話しします。人間関係は、原因であるより結果であることが多いのです。

厚生労働省の令和5年雇用動向調査によれば、前職を辞めた理由として職場の人間関係を挙げた割合は、男性で8.8%、女性で13.3%でした。詳細は令和5年雇用動向調査結果の概要で確認できます。
離職理由の上位に入る、無視できない数字です。同時に、9割前後の人は別の理由で職場を離れているとも読めます。
では、なぜ現場の実感としては、人間関係こそが最大の悩みに感じられるのでしょうか。労働時間の長さも、給与への不満も、評価の不透明さも、最終的には特定の誰かの言動として表面化するからだと考えています。残業代が出ないという事実は、それを告げる院長の顔とともに記憶されます。
整理します。人間関係が悪い職場では、人の性格が問題なのではなく、人の摩擦を生みやすい構造が先に存在している場合が多い。原因と結果を取り違えると、職場を変えても同じことが繰り返されます。

ここからが本題です。業界の内側にいる人ほど、思い当たる節があるかもしれません。
保険を柱にする整骨院では、施術一回あたりの単価が制度で定められています。売上を伸ばそうとすれば、来院数を増やすほかありません。一人にかけられる時間は短くなり、施術者は常に次の患者さんを意識しながら手を動かすことになります。
そうした環境で新人がつまずいたとき、先輩に何が起きるでしょうか。丁寧に理由から説明する時間はない。結果として、短く強い言葉が飛びます。本人に悪意はないかもしれません。ただ、受け取る側には叱責として届きます。
教育の時間が確保されていない職場では、指導は必ず語気に頼るようになる。人柄の問題ではなく、時間の問題です。
何を達成すれば給与が上がるのか。その基準が公開されている職場では、努力の方向が全員に共有されます。ところが基準が院長の胸の内にしかない場合、スタッフは互いの動向を気にし始めます。
指名が多いのは誰か、院長に気に入られているのは誰か。売上を追う設計であればなおさら、同僚は仲間であると同時に競争相手になります。表面的には仲が良くても、どこか張りつめた空気が漂う職場には、たいていこの背景があります。
整骨院は少人数の職場です。院長は経営の責任者であり、労務上の使用者であり、技術の師でもある。すべての権限が一人に集まります。
相性が良ければ、これほど成長できる環境もないでしょう。逆に合わなかったとき、逃げ場はどこにもありません。相談する相手も、評価を見直してもらう窓口も、同じ人物だからです。上位の記事が体育会系やワンマンという言葉で片づける現象は、この権限集中の裏返しだと見ています。
| 摩擦を生む構造 | 現場に表れやすい状態 | 見極めるポイント |
|---|---|---|
| 回転数を追い、教育時間がない | 説明が省かれ、指導の言葉が強くなる | 勤務時間内に質問・振り返りの時間があるか |
| 評価基準が見えない | 同僚の指名数や院長との関係が気になる | 昇給・昇格基準が文書で共有されているか |
| 院長に権限が集中している | 相談先と評価者が同じで逃げ場がない | 院長以外の相談経路や見直し手続きがあるか |

ここは、はっきりお伝えしておきたい部分です。職場の人間関係は運や相性の問題として語られがちですが、法律が明確に線を引いている領域があります。
職場におけるパワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動であること、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、労働者の就業環境が害されること。この3つの要素をすべて満たすものと定義されています。厚生労働省は代表的な行為を6つの類型に整理しており、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害が挙げられています。
そして、パワーハラスメントの防止措置は、2020年6月から大企業に、2022年4月からは中小企業を含むすべての事業主に義務づけられました。事業主が講じなければならない措置には、方針を明確にして周知すること、相談に応じる体制を整備すること、事案が起きた際に迅速かつ適切に対応することが含まれます。根拠は厚生労働省の職場におけるハラスメントの防止のためにで確認できます。
注意したいのは、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる指示や指導は、パワーハラスメントには当たらないという点です。厳しい指導のすべてが違法になるわけではありません。線はそこに引かれています。
逆に言えば、人格を否定する発言や、私的なことへの過度な立ち入り、集団での無視は、我慢すべき文化ではありません。整骨院という小さな組織であっても、事業主には相談体制を整える義務があります。

求人票にも採用ページにも、人間関係が良好と書かれています。書かれていない求人のほうが珍しいくらいでしょう。だからこそ、確かめ方を持っておく価値があります。
※「雰囲気が良いですか」ではなく、相談経路・評価基準・現場の会話を事実として確認しましょう。
面接では、ハラスメントの相談窓口が設けられているかを尋ねてみてください。事業主の義務である以上、答えられないほうが不自然です。誰が担当し、院長以外に相談できる経路があるのかまで聞ければ、権限が集中しているかどうかが見えてきます。
評価の基準についても同様です。何を満たせば昇給するのか、その基準は全員に共有されているのか。公開している職場は、評価に自信があるということでしょう。
可能であれば見学を申し込んでください。観察してほしいのは、院長がいる場面と、席を外した場面で、スタッフの口調が変わるかどうか。新人が先輩に質問できているかどうか。閉院間際の、疲れが出る時間帯の空気。求人票の何倍もの情報が、そこにあります。

人間関係の悩みは、同僚や上司に限りません。患者さんとの距離感に迷う声も、業界ではよく耳にします。
問診として生活背景を尋ねるのか、それとも会話を埋めるための私的な質問なのか。両者の境界は、施術者の意図ではなく、受け手の感じ方で決まります。趣味を尋ねる質問も、症状の原因を探る文脈にあれば有益な情報収集になり、脈絡がなければ立ち入りと受け取られます。
ここでも構造が効いてきます。何を聞き、何を聞かないのか。教育として言語化されている職場と、各自の裁量に委ねられている職場では、患者さんの体験がまるで違う。距離感の失敗は、個人の資質ではなく、教育の不在から生まれることが多いと感じています。

CUREPRO(株式会社May-Plus)は、東京、埼玉、千葉で10院を展開する整体院です。完全自費で運営しており、保険請求は行っていません。単価を自分たちで設計できるため、来院数を追いかけずに事業を成り立たせる構造を選んできました。一人ひとりに時間をかけられることは、施術の質だけでなく、教える側の余裕にも直結します。
評価の基準は、スタッフ全員に公開しています。何を満たせば給与が上がるのかが見えていれば、同僚は競争相手ではなく、同じ方向を向く仲間でいられる。スタッフの平均給与は42.7万円で、年間休日は選択制です。慢性的な痛みから難治性の症状、スポーツ障害まで、力に頼らない施術技術を学べる環境を整えてきました。外傷への対応は有資格者による判断が前提となるため、当院では扱っていません。
もちろん、私たちの職場が完璧だと申し上げるつもりはありません。人が集まれば、意見の食い違いは起こります。ただ、摩擦が構造から生まれるのなら、構造のほうを変えられるはずだと考えて手をつけてきました。研修の中身は教育研修制度に、働き方は募集要項と福利厚生のページで公開しています。

いまの職場がつらいとき、自分の忍耐力が足りないのだと考えてしまう方がいます。ほとんどの場合、そうではありません。時間に追われ、基準が見えず、相談する先もない。そんな環境なら、誰が入っても摩擦は起きます。
辞めるかどうかを決める前に、ひとつだけ確かめてください。つらさの原因は特定の人物にあるのか、それとも人を追い詰める構造にあるのか。前者なら環境を変えれば解決するかもしれません。後者なら、同じ構造の職場へ移っても同じ悩みが待っています。
答えが出ていない段階でも構いません。柔道整復師として現場に立ち、組織をつくってきた立場から、一緒に整理させていただきます。面接の一次には、代表の阿部が同席します。選ばれる理由もご覧いただいたうえで、エントリーフォームからご連絡ください。話を聞くだけでも、視界は変わるはずです。

院によって大きく異なります。ただ、少人数で院長に権限が集中しやすく、保険を柱にする院では時間的な余裕が生まれにくい構造がある。人柄だけでなく、働き方の設計まで見て判断することをおすすめします。
優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境が害される。この3つをすべて満たすものがパワーハラスメントと定義されています。客観的にみて必要かつ相当な範囲の指導は該当しません。
2022年4月から、中小企業を含むすべての事業主にパワーハラスメント防止措置が義務づけられています。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事案発生時の適切な対応が求められます。
問題ありません。雰囲気が良いかを尋ねるより、相談窓口の有無や評価基準の公開状況といった、事実で答えられる質問をすると輪郭がつかめます。答えを濁されたなら、それ自体が情報になります。
問診として必要な範囲か、会話を埋めるための私的な質問かで受け取られ方が変わります。何を聞き、何を聞かないのかが教育として言語化されている職場かどうかを確認してみてください。
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概要」(前職を辞めた理由)
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(パワーハラスメントの定義、6類型、事業主が講ずべき措置)
厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました」
統計および制度の内容は公表時点のものです。制度は改正されることがあるため、最新の情報は各出典をご確認ください。労働条件やハラスメントの判断に迷う場合は、労働局や労働基準監督署などの公的窓口にご相談ください。
働く環境の選び方をさらに深めたい方は、自費整体という働き方や柔道整復師の給料の考え方もあわせてご覧ください。求人の探し方については、柔道整復師の求人で整理しています。