
整骨院の離職率を調べると、同じ結論が並びます。柔道整復師を含む医療や福祉の分野の離職率は13%台であり、全産業の平均と大きく変わらない。だから離職率が高いというのは思い込みだ、と。
読んで安心した方もいるでしょう。ただ、その数字がどこから来たのかを辿ると、話は違って見えてきます。
柔道整復師として現場に立ち、いまは人を採用する側にいる立場から、統計の読み方をお伝えします。

引用されている数値の出どころは、厚生労働省の雇用動向調査です。産業大分類ごとに離職率が示されており、そのうちの医療、福祉という区分の値が使われています。
医療、福祉には何が含まれるでしょうか。病院、診療所、介護施設、訪問看護、保育所。従事者数は数百万人にのぼります。整骨院で働く柔道整復師は、その巨大な母集団のごく一部にすぎません。
看護師や介護職員や保育士の離職動向が平均値の大部分を形づくっている。その数字を柔道整復師の離職率として提示するのは、正確とは言いがたいでしょう。
雇用動向調査の調査対象は、常用労働者を5人以上雇用する事業所です。令和6年調査では、そうした事業所から14,867を抽出して実施されました。詳細は令和6年雇用動向調査結果の概要で確認できます。ちなみに令和6年の全体の離職率は14.2%でした。
ここで、自分が知っている整骨院を思い浮かべてください。常用労働者が5人以上いる院は、どれくらいあるでしょうか。院長を含めて2人か3人という現場が、決して珍しくないはずです。
整理します。多くの記事が引用する13%台という数値は、柔道整復師以外の職種を大量に含む区分の値であり、しかも小規模な施術所は集計の枠組みからこぼれている可能性がある。安心の根拠としては、心もとない。

では、実感に近い数字はどこにあるのでしょうか。新規学卒者の離職状況を見ると、輪郭がはっきりします。
令和4年3月に卒業した新規学卒者の、就職後3年以内の離職率です。事業所規模が1,000人以上の場合、大学卒は27.0%、高校卒は26.3%にとどまりました。ところが規模5人未満になると、大学卒は57.5%、高校卒は63.2%まで跳ね上がります。5人から29人の規模でも、大学卒52.0%、高校卒54.6%です。出典は厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)にあります。
| 事業所規模 | 大学卒 | 高校卒 |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 27.0% | 26.3% |
| 5~29人 | 52.0% | 54.6% |
| 5人未満 | 57.5% | 63.2% |
※令和4年3月卒の新規学卒者について、就職後3年以内の離職率を事業所規模別に示した数値です。整骨院や柔道整復師だけの集計ではありません。
小規模な事業所ほど、若い人が辞めていく。産業を問わず現れる傾向です。
同じ資料によれば、3年以内離職率は高校卒37.9%、大学卒33.8%、短大等卒44.5%。柔道整復師の養成校を卒業した方の多くは、短大等卒の区分に含まれます。産業別では、医療、福祉に就職した高校卒の3年以内離職率が49.2%でした。
もちろん、これらの数値がそのまま整骨院の離職率だというわけではありません。ただ、13%という平均値だけを見て安心するより、はるかに現実に近いのではないでしょうか。

統計は事実を示しますが、理由までは教えてくれません。現場を見てきた経験から、三つ挙げます。
第一に、逃げ場がないこと。院長が経営者であり、上司であり、技術指導者でもある。相性が合わなかったとき、相談する先も評価を見直す窓口も、同じ人物になります。
第二に、教育が属人的になること。カリキュラムを整える余裕がなければ、指導は先輩の背中を見て覚えるものになる。学ぶ側の成長は、配属先の運に左右されます。
第三に、評価の基準が見えないこと。何を達成すれば給与が上がるのかが院長の胸の内にしかない環境では、数年後の自分を描けません。描けない場所から、人は静かに離れていきます。
規模が小さいこと自体が問題なのではありません。小さい組織で起こりがちな構造を、意識して補っているかどうかが分かれ目です。

柔道整復師の離職には独立開業というポジティブな理由が多い、という説明をよく見かけます。半分は正しい。ただ、辞めた理由と行き先を分けて考える必要があります。
技術を磨き、資金を貯め、送り出されるように独立した人。もう限界だと感じて飛び出し、他に選択肢がないから開業した人。どちらも統計の上では独立による離職です。
見分ける方法があります。辞めた人がいまどうしているかを、その院が把握しているかどうか。祝福して送り出した相手なら、消息を知っているものです。

ここまでお読みになった方は、気づいているかもしれません。業界の離職率を調べても、自分がこれから働く院の実態は分かりません。
確かめるべきは、その院の数字です。面接では、次のように事実で答えられる質問へ置き換えてください。
※離職率だけでなく、対象期間・人数・退職理由まで確認すると職場の実態が見えやすくなります。
数字で答えられる院は、自分たちの状態を把握しています。把握している組織は、たいてい手を打っています。答えを濁されたなら、それ自体がひとつの情報でしょう。
加えて、離職率が低ければ良い職場だと決めつけるのも早計です。辞めたくても辞められない環境でも、数字は下がります。退職した人がどこへ行ったのか、独立を支援する文化があるのか。数字の裏側まで尋ねてはじめて、輪郭がつかめます。

CUREPRO(株式会社May-Plus)は、東京、埼玉、千葉で10院を展開する整体院です。完全自費で運営しており、保険請求は行っていません。単価を自分たちで設計できるため、来院数を追いかけずに一人ひとりと向き合う時間を確保しています。教える側に余裕がなければ、教育は仕組みになりません。
評価の基準はスタッフ全員に公開しています。何を満たせば給与や役割が変わるのかが見えていなければ、数年後の自分を描けないからです。スタッフの平均給与は42.7万円で、年間休日は選択制としています。施術は力に頼らない方法を体系として学び、慢性的な痛みから難治性の症状、スポーツ障害まで対応の幅を広げていきます。外傷への対応は有資格者による判断が前提となるため、当院では扱っていません。
小規模な職場で人が離れる三つの構造を、先ほど挙げました。逃げ場のなさ、属人的な教育、見えない評価。いずれも組織の設計で埋められるはずだと考え、手をつけてきました。研修の中身は教育研修制度に、働き方は募集要項と福利厚生のページで公開しています。

離職率が高い業界だから諦める。平均並みだから安心する。どちらの結論も、統計の使い方としては雑でしょう。
知りたいのは業界の平均ではなく、自分が働く場所の実態のはずです。在籍者数、入退社の数、勤続年数、辞めた人の行き先。事実で答えられる問いを重ねれば、輪郭は必ず現れます。
いまの職場を辞めるべきか迷っている。次を選ぶ基準が分からない。どの段階でも構いません。柔道整復師として現場に立ち、組織をつくってきた立場から、一緒に整理させていただきます。面接の一次には、代表の阿部が同席します。選ばれる理由もご覧いただいたうえで、エントリーフォームからご連絡ください。

その数値は産業大分類「医療、福祉」の離職率であり、病院や介護施設や保育所を含む集計です。柔道整復師だけを対象にしたものではありません。
同調査は常用労働者を5人以上雇用する事業所から抽出して行われています。それより小規模な施術所は、集計の枠組みに入っていない可能性があります。
令和4年3月卒の3年以内離職率は、規模5人未満で大学卒57.5%、高校卒63.2%でした。逃げ場のなさ、属人的な教育、評価基準の不透明さといった構造が背景にあると考えられます。
辞めたくても辞められない環境でも数字は下がります。退職した方の行き先や、独立を支援する文化があるかまで確認すると、実態が見えてきます。
在籍しているスタッフの人数、直近3年間の入社と退職の人数、勤続年数が最も長い方の年数、平均年齢。事実で答えられる問いを選んでください。
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」(産業別入職率および離職率、調査の概要)
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(学歴別、事業所規模別、産業別の3年以内離職率)
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」(集計の考え方)
統計は公表時点のものであり、集計方法や対象範囲に留意事項があります。数値の解釈にあたっては各出典をご確認ください。
職場の選び方をさらに深めたい方は、自費整体という働き方や柔道整復師の給料の考え方もあわせてご覧ください。求人の探し方については、柔道整復師の求人で整理しています。