柔道整復師の求人に応募するとき、志望動機の欄で手が止まる人は少なくありません。何を書けば採用担当の心に届くのか、正解が見えないまま、無難な言葉で埋めてしまう。そんな経験に心当たりがあるかもしれません。
採用する側から一つお伝えすると、志望動機は熱意を語る場だと思われがちですが、採用担当が読んでいるのは、実は熱意そのものではありません。熱意は、応募してくる人のほぼ全員が書いてくるからです。全員が書くものは、差になりません。では、何を見ているのでしょうか。見ているのは、この院をわざわざ選んだ具体的な理由と、あなたの目標がこの院の方針と噛み合っているか、という二点です。
この記事では、採用担当が志望動機のどこを読んでいるのかを明かしたうえで、新卒や未経験、経験者それぞれの例文と、避けたいNG例、履歴書と面接での使い分けまでを、採用する側の視点で解説します。なお、ここで扱うのは就職や転職で求人に応募する際の志望動機です。専門学校へ進学する際の志望理由書とは目的が異なる点だけ、先にお断りしておきます。
志望動機を読むとき、採用担当が最初に無意識に判断していることがあります。それは、この文章が自分の院に向けて書かれたものか、それともどの院にも出せる使い回しの文章か、という点です。患者さんに寄り添える柔道整復師になりたい、という一文は、聞こえはよいものの、そのままどの整骨院にも提出できてしまいます。使い回せる志望動機は、書いた時点で、すでに他の応募者との差を失っています。
採用担当が会ってみたいと感じるのは、その反対です。なぜ数ある院のなかからこの院を選んだのか、その理由が具体的に書かれていること。そして、その人が目指す方向と、院が提供できる環境が噛み合っていること。この二つがそろった志望動機は、短くても強く印象に残ります。裏を返せば、この二つを外した志望動機は、どれだけ言葉を尽くしても、読み飛ばされてしまいます。
採用担当に届く志望動機は、おおむね次の4つの要素で組み立てられています。順番に見ていきます。
一つ目は、柔道整復師を目指したきっかけです。自分の怪我や、家族が施術で助けられた経験など、原体験があると説得力が増します。ただし、ここを長く語りすぎないことが大切です。きっかけは志望動機の入り口であって、中心ではありません。二つ目は、応募先のこの院を選んだ理由です。ここが志望動機の心臓部にあたります。三つ目は、自己PRとして、自分の強みや、これまでの経験がどう活かせるかを示すこと。四つ目は、3年後、5年後にどうなっていたいかという展望です。この4つを、きっかけは短く、選んだ理由は厚く、という配分で組むと、全体が引き締まります。
4つの要素のなかで、もっとも差がつくのが二つ目の、この院を選んだ理由です。ここを具体的に書くには、応募先の院を事前に調べておく必要があります。採用サイトに書かれた施術方針や、保険中心なのか自費中心なのか、どんな症状を得意としているのか。こうした点に触れながら、自分がなぜそこに惹かれたのかを言葉にできると、志望動機は一気に他と差がつきます。調べる材料が足りないと感じたら、応募の前に職場見学へ足を運ぶのが近道です。見学で確かめるべき点は整骨院の職場見学の記事にまとめました。
ここからは、立場別の例文を示します。丸写しするためのものではなく、構成の型を体で覚えるための下敷きとして使ってください。それぞれの後に、採用する側から見てどこが効いているのかを添えます。
学生時代の部活動で足首を負傷した際、通っていた整骨院の先生に丁寧に施術と説明をしていただき、痛みだけでなく不安まで和らいだ経験が、柔道整復師を目指したきっかけです。数ある院のなかで貴院を志望したのは、保険の範囲にとどまらず、自費で慢性の痛みにも向き合う施術方針に強く共感したためです。まずは一人ひとりの身体を丁寧に診る力を身につけ、3年後には慢性症状にも対応できる施術者として、地域の患者さんの支えになりたいと考えています。
採用側の視点で言えば、きっかけを短くまとめたうえで、貴院を選んだ理由が院の施術方針にまで踏み込んでいる点が効いています。この一文は、方針の違う院には提出できません。使い回せない志望動機になっている、それ自体が評価につながります。
前職では営業職として3年間、お客様の課題を聞き取り、解決策を提案する仕事に携わってきました。身体の不調に悩む人を根本から支えたいという思いが強くなり、柔道整復師への転職を決意しました。未経験ではありますが、相手の話を丁寧に聞き取る力は、患者さんの状態を正しく把握するうえで必ず活かせると考えています。患者さんへの説明を大切にする貴院の姿勢のもとで、一から技術を学び、長く貢献していきたいです。
未経験の場合、経験のなさをどう補うかで印象が変わります。この例文は、前職の何が活きるのかを具体的に示している点が良いところです。学ばせてくださいという受け身の姿勢で終わらず、貢献したいという意思まで書けていると、採用担当は入職後の姿を想像しやすくなります。
これまで4年間、保険中心の整骨院で数多くの外傷や急性症状の施術に携わり、多くの症例を経験してきました。一方で、一人の患者さんにより深く向き合い、慢性の痛みに対応できる技術を磨きたいという思いが強まり、自費を中心とする貴院を志望しました。前職で培った基礎的な施術力を土台に、貴院の技術を吸収し、いずれは後進の指導も担える施術者へと成長していきたいと考えています。
経験者の転職では、辞めた理由をどう語るかが問われます。この例文は、前職への不満ではなく、次に何を得たいかという前向きな動機で転職理由を語っている点が効果的です。保険から自費へという目標が、応募先の方針とはっきり噛み合っているため、採用担当はミスマッチの心配なく読み進められます。
良い例の裏側には、採用担当が思わず手を止めてしまうNG例があります。代表的なものを、採用側がどう受け取るかとあわせて挙げておきます。
まず、給与や休日といった条件面ばかりを強調する志望動機です。待遇を確かめること自体は当然ですが、それが志望動機の中心になっていると、条件が良ければどこでもよいのだと受け取られてしまいます。次に、どの院にも出せる抽象的な志望動機です。人の役に立ちたい、成長したい、という言葉だけでは、なぜこの院なのかが伝わりません。三つ目は、前職や現職への批判です。人間関係が悪かった、評価されなかったといった理由をそのまま書くと、同じ不満をこの院でも口にするのではないかと警戒されます。四つ目は、勉強させてくださいという受け身で終わる志望動機です。学ぶ姿勢は大切ですが、それだけでは、こちらが何を与えられるかしか語っていないことになります。何を貢献できるかを一言添えるだけで、印象は大きく変わります。
志望動機は、履歴書に書く場面と、面接で口頭で伝える場面があります。この二つは、同じ内容でも見せ方を変えると効果が高まります。
履歴書の志望動機は、限られた欄に収める必要があるため、要点を絞って簡潔にまとめます。この院を選んだ理由と、活かせる強み、今後の展望を、無駄なく一続きにするのが基本です。一方で面接では、履歴書に書いた内容を土台に、掘り下げられても答えられる準備をしておきます。なぜそう思ったのか、具体的にどんな場面でそう感じたのかと問われたときに、自分の言葉で肉づけできるかどうかが分かれ目になります。履歴書と面接で話す内容がずれていると、それだけで信頼を損ないます。二つの整合を取っておくことが大切です。
面接では、志望動機と地続きで、どんな柔道整復師になりたいかを問われることがよくあります。この問いへの向き合い方は、柔道整復師の就活の記事で詳しく掘り下げています。面接そのものの準備は整骨院の面接の記事もあわせてご覧ください。
ここまで書き方を述べてきましたが、良い志望動機の土台にあるのは、文章の技術ではありません。応募先の院を、どれだけ深く知っているかです。院の方針を理解し、自分の目標と重なる部分を見つけられれば、志望動機は自然と、その院にしか出せないものになります。逆に、院を知らないまま言葉を飾っても、使い回しの文章にしかなりません。
私たちmayplus-recruitは、東京・埼玉・千葉で自費の施術所を展開するCUREPROの採用窓口として、就職や転職の相談を受けています。志望動機をどう組み立てればよいか、自分の目標がどんな院と噛み合うのか、採用する立場から正直にお話しします。書く前に応募先を知りたいという段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。自分がどんな院に向いているかを整理したい方は、就職先の選び方や、最初の3年の重みを扱った新卒の就職先選びの記事も、考えを固める助けになります。
監修
阿部 純治(柔道整復師)
株式会社May-Plus 代表取締役。柔道整復師として臨床に携わったのち、東京・埼玉・千葉で自費の構造改善専門院CUREPROを展開。慢性痛から難治症状まで対応できる技術者の育成に取り組む。