2026.07.15

柔道整復師の初任給の読み方|額面より3年後の伸びで選ぶ

柔道整復師を目指すとき、あるいは転職を考えるとき、多くの人が最初に気にするのが初任給の額面です。求人票に並ぶ月給を見比べて、少しでも高いところへ、と考えるのは自然なことでしょう。けれど、採用する側から見ると、初任給の額面だけを並べて職場を選ぶのは、少しもったいない選び方だと感じます。

理由は二つあります。一つは、同じ金額でも中身がまったく違うからです。もう一つは、初任給の高さと、3年後にいくらもらえているかは、必ずしも比例しないからです。むしろ、入り口の数万円の差より、そのあとの伸び方のほうが、生涯の収入を大きく左右します。

この記事では、まず柔道整復師の初任給の相場と手取りの実際を押さえたうえで、初任給という数字をどう読み解くか、そして初任給より大切な3年後の給与カーブについて、順を追って解説します。

柔道整復師の初任給は、いくらが目安か

初めにおおよその水準を共有します。柔道整復師の初任給は、公的な統計では単独の職種として集計されていません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、あん摩マッサージ指圧師やはり師などと合わせた「その他の保健医療従事者」という区分で扱われます。この区分から新卒相当の水準を見ると、月給でおよそ23万円台、年収に直すとおよそ290万円前後が目安になります。(出典:厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査)

参考までに、全産業の新規学卒者の初任給は、専門学校卒でおよそ22万円台、大学卒でおよそ24万円台とされています。柔道整復師の初任給は、専門学校卒の平均をやや上回る水準にあると言えます。実際の求人でも、手当を含めた額面で23万円前後からのスタートが一般的で、育成や賃上げに力を入れている院では25万円という提示も見られます。

手取りにすると、いくら残るか

ここで見落とされがちなのが、額面と手取りの差です。求人票に書かれた月給は額面であり、実際に振り込まれる手取りは、そこから社会保険料と税金が引かれた金額になります。目安として、手取りは額面のおおよそ8割前後です。額面23万円であれば、手取りはおおむね18万円から19万円台に収まる計算です。初任給を比べるときは、額面の大きさだけでなく、手取りでいくら残るかまでイメージしておくと、入職後のギャップが小さくなります。

同じ「初任給23万円」でも、中身は違う

採用側の視点で最も伝えたいのが、この点です。求人票に同じ「月給23万円」と書かれていても、その23万円がどう構成されているかは、院によってまるで違います。額面の数字が同じというだけで、実質はまったく別物ということが起こります。

求人票の初任給を、どう分解するか

初任給を読むときは、その金額を次の要素に分解してみてください。基本給がいくらで、そこに固定残業代がどれだけ含まれているか。歩合の比率はどの程度か。役職手当や資格手当、住宅手当といった各種手当がいくら乗っているか。たとえば、基本給20万円に固定残業代3万円を足して23万円としている院と、基本給23万円で残業代が別途支給される院とでは、同じ表示額でも実際の働きに対する報酬は変わってきます。固定残業代が組み込まれている場合、想定された残業時間を超えないと、いくら働いても支給額は増えにくくなります。

歩合の比率が高い院にも注意が必要です。成果が収入に直結する仕組みは、実力がついてくれば魅力になりますが、入りたての時期は指名や売上がまだ立たないため、想定より手取りが少なくなることがあります。初任給の額面が高い求人ほど、この内訳を確かめる価値があります。給与の構造については柔道整復師の給料の記事にも詳しくまとめました。

初任給より、「3年後の給与カーブ」を見る

初任給の話をしておいて逆のことを言うようですが、就職先を選ぶうえで本当に見るべきは、入り口の金額よりも、そこからどう上がっていくかという給与カーブのほうです。

柔道整復師を含む「その他の保健医療従事者」の平均年収は、およそ454万円という統計があります(出典:厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査)。ただし、この平均には開業して成功している人やベテランも含まれるため、若手のうちはこれよりかなり低いのが実態です。大切なのは、この平均に自分が何年で近づけるか、そしてどこまで超えていけるかであり、それを決めるのが給与カーブの傾きです。

では、その傾きは何で決まるのでしょうか。大きな要因は、保険中心の院か自費中心の院か、という点にあります。保険中心の現場は、施術できる内容が保険の範囲に沿うため、単価の面で天井が生まれやすくなります。自費中心の現場は、技術に対して直接対価をいただく仕組みのため、実力が伸びるほど収入も伸びやすく、天井が高くなります。初任給の数万円の差より、この天井の違いのほうが、数年後には大きな差になって表れます。将来の展望とあわせて考えたい人は、柔道整復師の将来性の記事も参考になります。

収入を上げる主な方法と、その順序

柔道整復師が収入を上げる方法は、いくつか知られています。歩合の高い職場で働く、役職に就く、ダブルライセンスを取る、独立開業する、といった方法です。どれも有効ですが、採用側の実感として、取り組む順序には整理が必要だと考えています。まず全体を一覧で示します。

方法主な効果注意点
自費中心の院を選ぶ単価と収入の天井が上がる相応の技術習得が前提になる
役職に就く(院長・分院長)手当が増え、任される範囲が広がるマネジメントの負担が伴う
歩合の比率が高い院成果が収入に直結する入りたての時期は不安定になりやすい
ダブルライセンス(鍼灸など)対応できる症状の幅が広がる取得の時間と費用がかかる
機能訓練指導員として働く待遇が良い場合がある施術管理者の実務経験にはならない
独立開業する収入の上限がなくなる経営のリスクを自分で負う

ここで順序として大切なのは、独立やダブルライセンスといった方法に飛びつく前に、まず自分が保険と自費のどちらの環境にいるかを見定めることです。天井の低い環境でいくら努力しても、伸びしろには限界があります。逆に、天井の高い環境で技術を積み上げれば、役職や独立といった次の手段も、より高い位置から選べるようになります。上げ方の一つひとつは有効でも、土台となる環境選びが先にあると考えてください。

手当と賞与で、見落とされる部分

初任給の比較では、月給ばかりに目が向きがちですが、年収で見ると手当と賞与の影響は小さくありません。柔道整復師を含む区分の年間賞与は平均でおよそ70万円台という統計もありますが、賞与の有無や支給月数は院の経営状況や給与規定によって大きく異なります。月給が同じでも、賞与が年2回しっかり出る院と、ほとんど出ない院とでは、年収に数十万円の差が生まれます。求人票では、月給の下に小さく書かれた賞与や手当の条件まで目を通してください。

なお、介護分野の機能訓練指導員は、待遇の面で柔道整復師の平均を上回るという調査もあり、収入だけを見れば有力な選択肢です(出典:厚生労働省 令和4年度介護従事者処遇状況等調査)。ただし前述のとおり、この期間は施術管理者の実務経験には含まれないため、将来の独立を視野に入れるなら、その点を踏まえて選ぶ必要があります。詳しくは機能訓練指導員の解説をご覧ください。

初任給の数字より、育つ環境で選ぶ

ここまで見てきたとおり、初任給の額面は、職場選びの入り口ではあっても、決め手にはなりません。同じ金額でも中身は違い、そして入り口の数万円より、3年後の伸び方のほうがはるかに大きな差になります。数字を読み解く目を持ったうえで、最後は自分がどれだけ育てる環境に身を置けるかで選ぶことを、採用する側としておすすめします。

私たちmayplus-recruitは、東京・埼玉・千葉で自費の施術所を展開するCUREPROの採用窓口です。当社の平均給与は42.7万円ですが、これは初任給が飛び抜けて高いという話ではありません。自費で技術に対価をいただく仕組みのため、実力が伸びるほど収入も伸びる、天井の高い環境だということです。裏を返せば、それだけの技術を育てる前提の職場だということでもあります。初任給の額面で迷ったら、その数字が3年後にどう変わるのかも含めて、応募の前でも構いませんので一度ご相談ください。最初の就職先が将来を左右する理由は、新卒の就職先選びでも詳しく触れています。

監修

阿部 純治(柔道整復師)

株式会社May-Plus 代表取締役。柔道整復師として臨床に携わったのち、東京・埼玉・千葉で自費の構造改善専門院CUREPROを展開。慢性痛から難治症状まで対応できる技術者の育成に取り組む。